なぜカブに特化?カブの魅力って?カブ専門店、ナナカンパニーさんに突撃取材をしてみた!

最近なにかと話題になる機会が多い、ホンダのカブ。
様々な雑誌で小型バイク特集やカブ特集が組まれ、アニメや漫画に登場し、かつては働くバイクの印象が強かったカブたちが趣味性の高い乗り物としてスタンダードになってきたように感じます。

私、高木はるかもクロスカブに乗り始めてもうすぐ3年が経ちます。
一昨年には追加でスーパーカブを購入しカブの魅力にどっぷりとハマる毎日を過ごしているのですが、愛知県にカブの専門店があると聞き、突撃取材に行ってきました!


※本記事では撮影用にマスクを外しているシーンがありますが、取材時はマスク着用の上、感染対策に配慮しております。

ナナカンパニーさんとの出会い

今回ご協力いただいたのは愛知県尾張旭市にあるカブ専門店 ナナカンパニー代表、水野さん。
本日はよろしくお願いいたします!


筆者がナナカンパニーさんに出会ったのは、クロスカブのフロントキャリアを検討していた時のこと。
ノーマル状態でのクロスカブのフロントキャリアは丸みがあってデザインとしてはかわいいのですが、積載するとなると安定しません。
手で押さえながら固定しないと荷物が転がり落ちてしまうことが地味にストレスでした。

そんな時に出会ったのが、ナナカンパニーさんが作られているこのキャリア。


クロスカブらしい外観の雰囲気を損なわず、フロントキャリアを積載しやすく整えてくれる、丁度ほしかったアイテムだったんです。

カブ専門店誕生の理由

  

  ―そもそも、水野さんはなぜカブの専門店を作られたんですか?

元々は名古屋市守山区でバイク屋を開いたのがきっかけでした。

いわゆる町のバイク屋さんのような店でカブ専門店という訳ではなかったのですが、カブに乗っているお客さんが徐々に増えてきて、2006年ぐらいからカブに特化していった感じです。
その後バイク屋とは別に、カブ用のパーツやアイテムを取り扱うナナカンパニーを開き、今はひとつの店に統合しています。


当時カブは趣味というよりは実用車として乗っている方が多く、一部でのみカフェカブミーティングのような場所で見られる、趣味としてのカブ乗りの方がいらっしゃった印象です。

こちらは昨年奈良で開かれたカブミーティングの一幕。カブを楽しむ人々が全国から集まる。



  ―ひと昔前まで、カブは働くバイクというイメージでしたよね。趣味性に重点を置くカブライダーが増えたきっかけってなんだったのでしょう?

「水曜どうでしょう」が大きかったです。
あの番組を見て、わざわざカブで、遠出をしたいという方が一気に増えました。
あの時はみんなが「水曜どうでしょう」のステッカーを貼っていたように感じます。

あとはmixiなどのSNSが出始めて、その中で交流ができるようになったというのもきっかけのひとつだと思います。


  ―それまではカブの専門店というのはなかったのですか?

いや、ありました。
ただ今のようにネットで気軽に検索して見れる時代ではなかったので、雑誌を購入して、掲載されているショップにドキドキしながら行って「すごいな~!」と見るようなイメージでしたね。
今はカブの車種も増え、「カブが欲しい」と選択してくれるライダーも増え、裾野が広がっているイメージがあります。


店内にはたくさんのパーツが並んでいる。



  ―ところでこれ…一体どれぐらいの商品を取り扱われているんですか?


ちょっと数え切れないですね…。笑
カブってメカの初歩的なことができちゃうバイクで、自分でメンテナンスしてみたいって思ったらエンジンをバラしてみたりタイヤ交換してみたりできちゃうんですね。
小さい部品も当然たくさんあるんですけど、以前はひとつひとつの部品を購入できるお店がそんなになかったんです。

だからうちでは、来ていただいたら欲しいパーツが購入できるぐらいにストックを持つことにしました。


  ―Twitterなどで入荷情報を見ていると、すごくマニアックなパーツも取り扱われている印象があります。

そんなパーツばっかりですね。自分で整備し始めると「このネジなくしちゃった」とか、そういうことが起きるんです。
なので、パーツは力を入れて取り扱っています。


  ―本当に、ニッチな品揃えです…!




  ―ちなみに、人気商品はどれでしょうか?


HK-CRAFTWORKSさんが作られている、このパーツは人気です。
なんだかわかりますか?



  ―…え?なんでしょう?正直まったくわからないです。


答えは、シートが左右にブレないように固定できる「SEAT BURENAR(シートブレナー)」というパーツなんです。
アイディア商品ですよね。こういうアイディアを思いつきたいですね~…!



※筆者注:カブのシートはシート裏に2つついている吸盤でやんわりと固定されているため、ノーマルの状態だと左右にぶれやすいのです。吸盤が劣化すると特に…!
シート裏の穴に金具が刺さることでしっかり固定できるこのパーツを使えば、シートをかなり安定させることができるのだそうです!

オリジナル商品にかける思い



  ―水野さんご自身は、カブ専門店を作られた延長でオリジナル商品を開発されるようになったのですか?

そうですね。最初に作ったのはカブ90のマフラーでした。


当時のカブはカスタムベースとしてはあまり見られておらず、マフラーを出しているメーカーは少なかったです。
それもあってカブを楽しむためのひとつのアイテムを出してみたいと思い、開発をしました。

その後もちょこちょこ商品数を増やして行っていますが、既に廃番であるカブ90のマフラーも引き続き作り続けています。
それは純粋に好きだからというのと、現役で走っている車両がいる以上は作り続けたいと考えているからですね。


  ―実はうちのスーパーカブも90㏄なんです。

90!そうなんですか!

2007年で90の廃版が決まったときは、噂はあったものの正式には後継車種が発表されていませんでした。

最後のカブになる可能性もあったのでできる限りたくさん仕入れました。
それも本当にすぐ売り切れちゃいましたね。

そのうち1台は10代の男の子がわざわざ滋賀県から、当時ネット販売もできない中、新幹線に乗って契約しに来てくれました。
そういった熱い思いを持って乗ってくれる人がいるのはカブならではですね。



  ―カブが特別、ということですかね?


特別…というわけじゃない、普通のバイクなんですけど、他にないんですよね。


  ―特別じゃないけど、特別ですね。笑
  オリジナルの商品のアイディアはどういったところから来ているのですか?


「こういうのがあったらいいな」というものを、お客さんの声もありますし、実際乗る中でも思い浮かんだものを形にしていこうとやっています。
ナナカンパニーのオリジナル製品は国内の、というかすべてこの近隣の町工場の方と一緒に作っています。

皆さんとても情熱を持って作ってくださってすごく有難いですし、そんな方たちと一緒に作ったものでお客さんも喜んでくださったらすごく幸せです。

こういったマフラーの開発にも、作り始めてから完成までは半年ぐらいかかります。
ひとつ作るのにも切ったり曲げたり溶接したり磨いたり、いろんな職人さんが関わってくださるんです。
その方たちの「いいものを作ろう」という思いが詰まっていて、本当に感謝しかないです。

ナナカンパニーさんのマフラーはもちろん全商品JMCA認定!安心してカスタムできます。

カブ乗りの動向って、ちょっと特殊?



  ―水野さんから見て、カブの面白さってどういったところですか?

カブは背伸びせずに乗れるところがいいですね。
バイクって乗っているうちに大排気量の速いバイクに乗りたくなってくることが多いと思うんですけど、それらを一通り乗った後にカブに乗ってみると、気を張らずにリラックスして乗れることに驚いたっていう声をよく聞きます。


もちろんパワーのあるバイクにも楽しさってあるんですけど、カブはスピードを出さなくても楽しめる。トコトコ散歩みたいに乗る面白さがありますね。
かと思えば、ガチで乗ろうと思うと案外どこまででも乗れちゃう。高速は乗れないけどね。


  ―逆に小型にしか走れない道があるというのも楽しいですよね。
  私の周りではカブを複数台集めている方もよく見かけます。

多いですね。やっぱり好きなんでしょうね。年式で違いますから。
あと現実的には、原付だから集められるっていうのは大きいでしょうね。維持費の面でも。



  ―維持費は本当にそうですね。

スーパーカブ70もいました。




  ―そういえば最近、「バイクブームが来た」といろんなところで聞きます。

来てます。すごく来てますね。特にリターンライダーの方が多いです。

僕らぐらいの年齢、今50代ぐらいの方が若い頃って、本当にみんながバイクに乗っていたんです。
結婚や子育てでいったんバイクから離れていたこの年齢の方たちが、知り合いに誘われたり、コロナ禍で時間ができたりでどんどん戻ってきています。


まだまだこれから乗る方は多そうなので、当分はこの動きが続くと思います。
女性のカブ乗りや、夫婦で乗られる方も増えてきていますね。



  ―在庫はどうですか?中古車市場ではバイクが足りないという声も聞きますが。

実は、もともとカブって状態の良い中古車が出回りにくいんです。

カブの特性として、1台購入したらずっと乗り続ける方が多くて。

新しい車種が出たから買い替えるという性格のバイクじゃないんですね。
なので中古車として出回ってくるカブは走行距離も多く「一仕事終えた」車両が多いです。

極端な話、カブって修理しながら乗れば一生乗れるようなものなので。
例えばお爺ちゃんのカブを孫が受け継ぐなんてこともあるぐらいです。


  ―ということは、カブはあまり中古で購入しない方がいいのですか…?

そういうわけではないのですが、値段に納得できるかどうかですかね。
状態の良い中古車はほぼ新車と同じような値段で売られているんです。


もしも新車が手に入る車両であれば、少しお金を追加して新車を購入してもいいかもしれない。

タイ仕様のスーパーカブ110もありました。
水野さん曰く「タイは人とバイクとの距離が近くて魅力的」最近のカブのトレンドはタイ発信のものがほとんど。

最後に



  ―最後に、ナナカンパニーさんのこれからについて教えてください!

これからですか…。笑
うーん……。

このままがいいって言ったら…。

うん、でも。

これからも引き続き、カブに携わってやっていけたら嬉しいですね。


ありがとうございました!

たくさんのカブに囲まれながらカブ乗りの大先輩である水野さんのお話を聞いているうちに、カブを選んでよかったなあとカブ愛がじんわり心に沁みました。

特別ではない、でも特別なバイク、カブ。
一生もののバイクたちなので、これからも大切に乗り続けていきたいですね!!



取材ご協力:ナナカンパニーさま