前回のあらすじ
酷道とは、国道でありながらも道幅や勾配、路面状況などが酷い道を言う。
その中でも日本3大酷道のひとつに挙げられることが多いのが、和歌山県御坊市と三重県尾鷲市を結ぶ全長210kmほどの距離を誇る国道425号線である。
1日目は和歌山県御坊市-奈良県下北山村の160kmを走行。「国道」の区分を疑いたくなるほどの・・・
崖

橋

川?

木

荒れた道を走るうちに何を見ても驚かなくなり、

と言いたいところだけど驚きつつ、

下北山村にたどり着き、キャンプをして1晩を過ごしたのでした。
2日目のスタート 奈良県下北山村
おはようございます。
2日目である本日は、国道425号線走破に向けて三重県尾鷲市を目指します。
まずは国道169号線を100mほど登り、音枝トンネルの手前で右折して国道425号線に入り、その後は池原貯水池に沿って走ります。

酷道らしく、大型車の通行は困難です。

ここでみなさんにひとつ、悪いご報告があります。
それは、これ。

えっ?!?!
落ち着こう。なにかの間違いじゃないかな。

ん゛っ!!??
そう。実はこの先通行止めになっており、尾鷲方面に通り抜けることはできません。
尾鷲方面に通り抜けることはできません!!??
えっっっ?!?!

走破できないじゃん。
…いや!!
普段のツーリングであればあきらめて引き返すのですが、今回は425号線を走破するためだけにやってきました!!
やってやろうじゃない(?)
ということで坂本ダム手前の通行止め区間まで走り、来た道を引き返し、迂回路である国道169号線を走って三重県尾鷲市まで行き、そして尾鷲方面から再度425号線に入り、反対側の通行止め区間へアクセスするルートで走破をしたいと思います。
そのため本日の走行計画はこんな感じ。
110kmほど走る予定です。
ものすごく無駄なルートに見えますが、2020年12月現在はこれが最短です。
通行止めまで 奈良県下北山村-坂本ダム手前(奈良県上北山村)
ダムの上を走るのは眺めが良くて気分がいい。

天気が良いこともあり、水が光を反射して爽やかなブルーに発色している。
船を出してバス釣りをしている人たちもチラホラ見かけ、非常にのどかな雰囲気です。
先が通行止めになっているからか、この道は用事(主にバス釣りや林業)がある人か、私のように道自体を目的として来ている人しか通りません。
そのため路面にたくさんの落ち葉が積もっている区間もあり、特に水はけの悪い場所はまさに酷道といった状態。
アスファルトの上に落ち葉が積もっている際に怖いのは、葉っぱにまざって石が落ちていても気が付きにくい点です。
タイヤをとられて転倒しないように、常に心はオフロードを走りましょう。

国道425号線はしょっちゅう災害の被害を受け度々通行止めになるのですが、下北山村ー通行止め区間まではその数が多いようで、いたるところに傷跡が残っています。

こんな感じで路肩に土嚢が残された場所も少なくありません。
なにより驚いたのが、これ。

おわかりいただけただろうか。
土嚢の中に

杉の木が生えていました!!!力強いですね。
道中がこんな様子だと通行中に崖が崩落したり橋が落ちたりするのではないかと怖くなりますが、こう見えても一応国道のため、メンテンナンスはしっかりされています。

過去にワイヤの破断が見つかったことがあるという恐ろしい話もあるこの備後橋ですが、取材の半月後から点検のため一時通行止めになるということです。
よく見ると金具類も新調してあることがわかり、安心して渡ることができました。
たぶん「石」と書いてある巨大な落石。

路面に散らばる木々

走り続けること20分ほど、通行止め箇所にたどり着きました。

この先はがけ崩れになってしまい、2019年6月より工事をしています。
長く続く通行止めに「このまま修繕は終わらないのではないか」と思っていましたが、どうやら少しずつ作業は進んでいるようです。
何年か待てば再び走り抜けることができるようになるかもしれません。
余談ですが、通行止め付近のガードレールです。

DIY精神を感じました。
通行止めの反対まで 三重県尾鷲市-坂本ダム付近(奈良県上北山村)
それでは通行止めの反対側へ向かいましょう。
今来た道をそのまま引き返し、

ぐるっと迂回して尾鷲市にやってきました。
ここが尾鷲市側の国道425号線の始点です。

1日目のスタート地点であった和歌山県御坊市同様いわゆる普通の交差点という雰囲気で、この先にあのようなエンターテインメント性の高い道が控えているとは事前知識なしでは予想できません。
尾鷲側からも通行止めにより奈良県側に通り抜けできないことが掲示してあります。

行き止まるとわかっていても走らなければいけない道が、ここにはある。
始点より8kmほど先にごみの処理場があり、そのあたりまでは狭いながらも整備された道という印象です。

国道とまではいかなくても、県道にはよくありそうな雰囲気の道です。
白線もこの通り。

走り続けるうち、徐々に“らしく”なってきました。

既に洗脳されつつあるため
「来た来た来た来たーーーーっ!!!!」
テンションが上がってきます。
尾鷲側に来て印象的だったのが、凍結防止剤の多さ。

カーブごと言っても良いほどいたるところに置いてあります。
全部をカウントしたわけではないのですが、40個以上の凍結防止剤が設置してあったように思います。
この様子だと凍結が多いのでしょうか。冬はバイクでは来ない方が良いかもしれません。
打ち捨てられた看板たちの訴えは今にも消えてしまいそうです。
かつてはレジャーで訪れる人も多かったのでしょうか?

しばらくはすれ違う車もなく、聞こえるのは鳥や鹿などの動物の声ばかり。なんだか寂しい気持ちになります。
橋の上には砂が積もっています。

雰囲気のあるトンネルを抜ければ、

おおよそ18km、時間にして40分ぐらいで三重-奈良県の県境を越えました。

標識には十津川・下北山方面とありますが、もちろんたどり着くことはできません。
とっておきの滝を独り占め 奈良県上北山村
県境から奈良側へ1分ほど走ったところにおすすめのスポットがあります。
それがこちら、かくれ滝。

その名の通り隠れた滝で、入り口からは滝の影すら見えません。
橋を渡って岩を越えたところに、ありました。

視界いっぱい、大迫力の滝です。

これまで425号線沿いで見てきた滝の中では一番距離が近く、水量高さともに大きいため圧倒されてしまいます。
あまりの高さに見上げているうちに首が疲れてきました。が、それでも見続けたいほど力強くて美しい。
くぅ~っ!かっこいい!!!
今日までしばらく晴れが続いていたためこれぐらいの水量ですが、雨の後はもっと豪快に流れることが予想されます。
お越しの際は無理に近づかないようにお気を付けください。
国道425号線、走破 坂本ダム付近(奈良県上北山村)
酷道に戻り、走っているうちにダムが見えてきました。坂本ダムです。

ガードレールがないって怖いね。
なぎ倒されたミラーも見られるのでおすすめです!

坂本ダムにはトイレが設置されているため、決壊しそうな方はここで放水しましょう。
ここまでくればあと僅か。荒れた路面を一気に駆け抜け、

ここがゴールです!!!

落ち葉が絨毯のようにフカフカ。
あたりは自然たっぷりで、この撮影をしている間も付近では「ぎゃっぎゃっぎゃっ」と謎の鳴き声が聞こえてくる。
これはあれじゃないだろうか。
サルじゃないだろうか。
怖い。
喜びも束の間、鳴き声が近く身の危険を感じたため慌てて退散をしました。
案の定帰り道に猿の群れを見かけ、改めて国道425号線の険しさを思い知らされることになりました。
動物とバトったら人間はもれなく負けます。みんなも迷わず逃げてね。
まとめ
奈良県下北山村→三重県尾鷲市
合計110km 4時間(迂回・休憩含む)
以前は全道通して酷道というのが売りだった(?)国道425号線も今ではかなりの区間が改善され、下北山-尾鷲間に関しても場所によってはかなりきれいになっている印象を持ちました。
まだ残っている酷道区間、かなり貴重だと思うので、走れるうちにトライするべきだと思います!!
本日の区間は土嚢や融雪剤など、自然災害への対応を頻繁に見かけました。
それだけ山深いということで、普通の国道を走っていては絶対見られないような自然をたっぷり堪能できるルートです。
記事上でもご紹介したかくれ滝は特に、これまで見た滝の中でも一番といっても良いほどきれいでした。
通行止めの中にあるからこそできる最高の滝を独り占めする贅沢、是非味わいに行ってみてください。
といっても、通行止めが解除された後も観光客はそれほど多くはならないと思います…。笑
ちなみにこの国道425号線は一部、鳥獣保護区の中を通ります。過去に遭遇した動物を挙げるとマムシ、鹿、カモシカ、サル、イノシシ、キツネなどなど…。
突然動物が飛び出してくることもありますので、走りに行かれる際には十分お気を付けください。

それではまた次の記事でお会いしましょう!
高木はるかでした。