新型コロナの影響で人気が高まるバイク通勤の安全運転について、専門家に聞きながら考えてみた

新型コロナウイルスの流行が始まり早くも1年が過ぎようとしています。

感染対策として密を避け、電車通勤からバイク通勤に切り替えたライダーは多いのではないでしょうか。

私、高木はるかもその一人です。

日頃から週末のツーリングを楽しんでいるから運転には慣れているはずだと思っていたところ、乗り続けるうちにあわや事故というシーンを何度も見かけることに気がお付きました。

そう。自分自身を含めて通勤時は誰もに時間の余裕がなく、乱暴な運転が多く見られたのです。

これはまずいぞ。いつか事故を起こしてしまいそう。

バイクを愛する通勤ライダーとして、なにかできることはないか考えてみることにしました。

警視庁に二輪車事故の傾向について問い合わせてみた

まずは実際にどのような事故がライダーの身に起きているのかを調べてみましょう。

今回は警視庁が公開している、東京都内で起きた交通事故のデータをお借りしました。

件数で見る

2020年、二輪車の交通人身事故の件数自体は減少の傾向にあります。

事故件数自体は減少傾向にある

 

これは安心と思ったのですが、悲しいことに、死者数は2019年と比較すると増加していたのです。

なぜでしょうか。

警視庁にうかがってみたところ、複数の要因が積み重なったものと考えられるということでした。

一例として、緊急事態宣言下において都内の交通量が減少した影響により、車両の速度が上がったことで個々の事故の重大化につながったこと。

新型コロナウィルス感染拡大に伴い交通安全イベントや交通安全教育等が実施できず、例年に比べて交通安全に関する意識付けの浸透ができなかったことなどが要因と推察されるのだそうです。

また2020年の二輪車死亡事故の特徴としては、車両単独事故が増加したこと、50歳代の死者が増加したことなどが挙げられ、「コロナ禍」における生活様式の変容により、公共交通機関から二輪車利用へシフトされたことも要因の一つではないかと推察されるそうです。

ただし年推移で見ると、1989年、2019年に次いで戦後3番目に少ない死者数であるため、近年のライダーの安全運転もうかがえるデータとなりました。

内訳で見る

では、実際にどれぐらいの事故が通勤時間中に起きているのでしょうか。

内訳を見てみたところ、死亡事故のおおよそ50%が通勤中に発生していることがわかりました。

 

具体的に交通事故が発生しやすい箇所を見てみると、交差点まわりがあわせて60%ほどと大部分を占めるものの、単路(道路の直線区間)も41%と少なくありません。

交差点付近を警戒するのはもちろん大切ですが、事故はどこでも起き得るということを忘れてはいけません。

多くの2輪車事故が交差点内、交差点付近で起きている。

 

最後に死亡事故の際に致命傷となってしまった部位を調べてみると、頭部が48.7%。
続いて胸部が28.0%、腹部が9.8%と大部分を占めています。

 

警視庁からライダーの皆さんへ

MOTOZIP読者の皆さんへメッセージをいただきました。

こんにちは。
警視庁よりライダーの皆さんへお伝えさせてください。

令和2年中(2020年)のバイク死亡事故で一番多かったのは、単独事故です。
単独事故は、自分で注意すれば防ぐことが出来ます。

特に通勤中はついつい急いでしまいがちですが、そんな時こそスピードを控え、余裕を持った運転を心がけましょう。
また、バイク乗車中に亡くなった方の致命傷は、頭部、胸部、腹部がほとんどです。

自分の命を守るため、ヘルメットはあご紐をしっかり締め、胸部プロテクターを着用しましょう。

 

そう!!普段のツーリングはもちろん、通勤中もフルフェイスヘルメットとプロテクター入りのライディングウェアはとっても大切。
毎日の通勤となると面倒くさいという気持ちも出てしまいますが、毎日乗るからこそ、自分の身体を守る対策をとりましょう!!

胸部プロテクター入りのウエアを選びたいですね!

 

プロテクターなしのウエアには、中に着るタイプのプロテクターが便利!

 

日本二輪車普及安全協会に安全運転のポイントを聞いてみた

より注意深い運転を心がけるようになったものの、もっと具体的に気を付けるべき部分を知りたい!!

そう思い、二輪車ユーザーがより安全で快適なバイクライフを過ごせる社会をめざて活動されている、日本二輪車普及安全協会に、気を付けて運転したいポイントについてうかがってみました。

バイクに乗るときに特に注意したい点は下記の4点だそう。

  • 出合頭の事故
  • スピードオーバーでの事故
  • 左折車のまき込み
  • 右折直進事故

 

ひとつずつ解説していただきました。

あわせて私自身がヒヤリとしたエピソードをイラストにしてみたので、読者のみなさんもイメージしながら一緒に考えましょう!

出合頭の事故

交差点などで、異なる方向から侵入した車両同士が交差する際にぶつかってしまう事故のことです。

通勤中は急ぐあまり、十分な安全確認ができていないまま見通しの悪い交差点に進入する車両もいます。

しっかり確認をすれば防げる事故もたくさんあります。

ミラーや目視で安全を確認した上で走行しましょう。

 

CASE1
見通しの悪い交差点を通過する際、ミラーや目視で確認していますか?
こちらが優先道路を走っていたとしても、相手の確認・認識不足により事故が起きてしまう場合もあります。

相⼿側が⼀時停⽌であったとしても、必ずしも⽌まってくれるとは限りません。 万が⼀相⼿が⾶び出してきた時には⽌まれるよう、速度を落として⾛⾏しましょう。

 

 

スピードオーバーでの事故

スピードの出しすぎにより制御し切れなくなったり、反応が遅れたりすることから起こってしまう事故のことです。

通勤中は車両や歩行者などが多く、急に飛び出してきたり、渋滞が発生していたりと昼間や休日とは状況が異なる場合もあります。

法定速度を守って安全に運転をしましょう。

 

CASE1
朝の時間帯は徒歩での通勤・通学者もたくさんいます。
横断歩道はもちろん、そうでないところで突然飛び出してくる場合もあります。

信号のない交差点は特に気を付けたい。交差点付近では特にスピードを抑え、止まっている人がいたら止まれる余裕のある運転をしたいですね。

 

CASE2
カーブの先の死角で渋滞が発生していることも少なくありません。
曜日・天気などによって予期せぬところで渋滞が発生するのが通勤時間帯の特徴のひとつです。

スピードが出すぎた状態で思いっきりブレーキをかけると、制御不能になり転倒してしまうかもしれません。無理のない速度で走りましょう。

左折車のまき込み

交差点を左折しようとした車両が、後方や側方にいる二輪車や歩行者に気づかず巻き込んでしまう事故のことです。

車には死角があることを十分理解した上で、その中に入らないように走行しましょう。

また歩行者や自転車を相手に自分自身が加害者になる場合もあります。

左折前には必ず巻き込みがないことを確認しましょう。

 

CASE1
交差点以外の場所でも、左側の建物に入ろうとする車が左折してくる場合もあります。
すり抜けをすると、こういった車との巻き込み事故を起こしてしまうかもしれません。

左折車に後ろから近付いた場合、死角に入り認識されにくくなってしまいます。 混雑する通勤時間中はすり抜けをしたくなる気持ちもありますが、ぐっと我慢しましょう。

 

CASE2
障害物があり見通しの悪い場所での左折は、歩道が見えにくい。
スピードを落とさないまま左折すると、歩行者や自転車を巻き込んでしまうかもしれません。

道路では歩行者・自転車が優先。 自転車で通勤中する学生さんも多いため、自身が巻き込み事故の加害者にならないよう、ミラーや目視でしっかり確認して左折しましょう。

 

 

右折直進事故

直進する車両と、右折をしようとする対向車両が衝突してしまう事故です。

私自身もヒヤッとすることが多く、また友人が「右直事故」に遭ったという話は度々聞きます。

バイク(直進)と右折(自動車)の間で死亡事故につながるケースが多く、最も気を付けるべき事故のひとつです。

 

CASE1
車や渋滞が多い朝の通勤時間帯では、無理な右折も多くみられます。
バイクに気づかず僅かな車間を狙って右折の対向車が突っ込んできた場合、右直事故が起きてしまいます。

バイクは車体が小さいので前の車対向車の後ろに隠れてしまい、対向車に気づいてもらえないこともあります。 対向車に右折待ちの車がいた場合は、一時的に中央線寄りを走ったり前の車との車間距離をとったりなど、自分の存在をアピールする対策も効果的です。 また夜間はヘッドライトの光しか見えないことも多く、距離感や速度感がつかみにくいため、対向車が右折してくることがあります。「かもしれない運転」を心がけましょう。

 

CASE2
渋滞の中、中央線付近をすり抜け運転しているバイクを見かけることがあります。
交差点に進入する人から認識されづらく、右直事故が起きやすい大変危険な運転です。

右折合流をする際、歩行者・自転車・バイクなどが車の影に隠れているかもしれません。 通勤時間帯は特にすり抜けをするバイクが多いため、気を付けて運転しましょう。

 

事故に遭わないための心掛けとは?

事故に遭わないための運転について日本二輪車普及安全協会さんにうかがうと、

時間に余裕をもって出発して焦りのない運転をすることはもちろん、
遠回りになったとしても事故が起きにくい交通量の少ないルートにすることも選択の1つです。
忙しい朝ですが、焦ってすり抜けやショートカットなどをしても到着時間に大差は出ません。
万が一出発が遅れてしまった場合でも心に余裕を持ち、いつも通りの運転を心がけましょう。

また最近は高齢者のドライバー、速度の速いスポーツ自転車、スマホを見ながら歩く人も増えています。
通勤時に限らず、一般道ではこれまで以上に注意した運転が必要になっていることを認識し、例え相手に過失がある状況であっても危険を予測して事故を未然に防ぐことが重要になっています。

ということでした。
お話をうかがううち、私自身の運転の反省点がたくさん思い浮かんでしまいました…!

まとめ

本記事では通勤時にスポットを当て、近年の事故の傾向や安全対策の大切さ、そして事故に遭わない運転方法について考えてみました。

まだまだ新型コロナの脅威は衰えず、バイク通勤の需要は続くとみられています。

それぞれの事故ごとに過失割合が違い、バイクにほとんど非がない・あるいは少ない場合もありますが、どちらに過失があったとしても、対車の事故による怪我や車体の破損のリスクが高いのは、間違いなくバイクです。

この記事を通して、ちょっとした確認と注意で防げる事故もたくさんあるということが伝わるととても嬉しいです。

自分の身を守る運転を、一緒に頑張りましょう!!