ドキッ!崖だらけの国道157号線をクロスカブで走破してみた!ー後編

前回のあらすじ

酷道とは、国道でありながらも道幅や勾配、道路状況などが酷い道を言う。

こんにちは、高木はるかです。
冬季は通行止め、それ以外も大雨や災害にて度々封鎖される崖っぷち酷道、国道157号線。
前回は岐阜市より出発し、入口から熱烈な警告を受けながらも酷道区間に突入しました。


そこで待ち受けていたのは、まるで酷道の見本市のような道路の数々。
苔が生えたアスファルト、崖っぷち、洗い越し、ワクワクが止まりませんでした。

そして迎えた岐阜―福井県境。
まだまだ道は続きますよ!!

福井側は路面に注意?!

福井県への入り口です。

当然この先も大型車は通行不能。
車両サイズの制限が8.0mと、岐阜県側の入り口よりも0.3m長くなっているのが気になりますが、恐らくただの表記のブレで深い意味はないと思われます。
ちなみにクロスカブの左側に見える小道は登山道の入り口です。

周囲には登山客とみられる車が複数台停まっていて、経験者であれば3時間ほどのコースのようです。
今でさえ十分山深いのに、ここから更に山へ入っていく方の体力は化け物級では…!?

県境を越えると見晴らしがよくなり、目の前に広がる空の高さに天気の良さを再確認します。
ヘアピンカーブからの、この景色!

景色に夢中になってはいけません。岐阜側と同様に福井側も足元は油断大敵です。
コンクリート舗装がひび割れ、亀の甲羅のようになっています。こんな所にスポーツタイプのバイクで訪れたら悲鳴をあげそうです。クロスカブも例外なく振動が激しく、この上を走行中は思わず「うおぉ…」と唸ってしまうほど。

ただし全体的にみると大半はアスファルトによる舗装で、コンクリート舗装の箇所は少なく部分的。
コンクリート舗装はアスファルトと比べると一般的には耐久性が高いそうなのです。ひょっとしてひょっとすると開通直後は未舗装路→その後コンクリート舗装→舗装が傷んだところはアスファルトにて再舗装というような感じで、かつての舗装の生き残りだったりするのでしょうか?
気になったので帰宅後調べてみたのですが、1999年に書かれているブログで「コンクリート舗装が続く」といった記述をされている方がいらっしゃいました。

もしかすると…。ロマン、ですね。



状況が良くないのは路面だけではありません。
谷にかかる橋はご覧の通り。

手前の視線誘導標の高さがこの辺りの雪深さを物語っていますが、そんなことよりも気になるのがガードレールの代わりに張られたロープたち。
頼りなさそうに言えるロープですが、ないよりはマシなのでしょうか?

中でもポールの1本は根元からぽっきり折れており、ロープによって辛うじて引っかかっている始末。
「いや、お前がぶら下がるんかい!」と思わずツッコミを入れずにはいられません。

なによりポールが折れたのは誰かがぶつかったり寄りかかったのだと思うのだけど、その方は無事なのでしょうか?方向的に、下の川に落っこちていてもおかしくないのですが…。
酷道では決してポールやガードレールを信用しない。教訓が生まれた瞬間です。
といっても相変わらずガードレールひとつない区間も多いので、信用しようがないんですけどね。

どこまで走っても「こりゃすごいな…」
独りごとを言いながらも道路脇にバイクを停めて付近を観察します。

この部分のコンクリート舗装は道幅に対して車1台分しかなく、それ以外の路肩はかつての未舗装路が顔をのぞかせています。
その部分をよく観察していると、

おわかりいただけただろうか。シカの足跡です。
これだけの山奥、そして人の少なさから考えれば当然なのですが、夜の国道157号線は動物たちのための道路と化しているようです。もちろんイノシシやサルなども生息しているはずで、か弱い人間にとっては脅威的です。


山道ではお馴染みのガードレール代わりのコンクリートブロックにも年季が入っています。

コンクリートブロックがどれほど落下を防いでくれるのかはわからないけど、こっちの道にもつけてもいいんじゃないのかなぁ、なんて思いながら進みます。
贅沢すぎますかね?

国道157号線は絶賛改良中!

モサモサと生い茂る木々と豊かな水源しか見てこなかった道中ですが、ここに来て少し味が違うものに出会いました。
それは、植林です。

整然と並ぶ杉の木には1本ずつマークがしてあり、管理された林であることを示しています。そして林業小屋のような建物の隣にはバンが停まっていて、作業中の方がいらっしゃるではないですか…!
当然のことながらここまでの道中スマホはずっと圏外。この付近を住居・または職場にされている方はいないんだろうと勝手に思っていましたが、間違いだったようです。

杉たちに囲まれたこの直線区間はファンの間では温見ストレートと呼ばれています。

先ほどまでのグニャグニャ道からのギャップが激しすぎる!
久しぶりの直線にスピードを出したくなるかもしれませんが、その先にもブラインドカーブやヘアピンカーブがあるのでお気をつけて。

ここまで失礼ながらもかなり酷い道続きだった国道157号線ですが、国道というだけあり、朽ちるままに放置しているわけではありません。
中には改良中の場所もあります。それがこちら。

この角度だとわかりにくいのですが、上から見るとこんな感じ。
大回りな上急カーブになっている今の道を、ショートカットしつつ緩やかなカーブに改良している最中でした。

改良と言えば、以前は悲惨に折れ曲がった姿で人気を集めていたこの国道標識は、ここ数年の補修でまっすぐに直してあるようでした。

一見整備が行き届いていないように見えて、実はちゃんとメンテナンスされている。
国道157号線の裏の顔を見たような気持ちです。

酷道の終わり

さて、ここまで走れば酷道区間はもうあと僅か。
気持ちの良い川沿いの道を抜ければ

唐突に2車線道路が姿を現します。

本当に突然きれいな道に変わるので、
「え?!終わり?!これは終わりなの?!」
ヘルメットの中で混乱の独り言を連発してしまいました。そう、これで酷道区間は終わりです。
このあたりはゆっくりながらも常に災害復旧などの対応が進んでいるようで、交互片道通行の工事区間が多かったのが印象的です。

それを抜ければ真名川ダムが見えてきます。いい景色!!

上機嫌で「ヤッホー!」と声を出しながら走ると、ダムの中に出っ張った岬のような形状をした土地に、なにやらキラリと光るものが見えた気がします。
なんだあれ?

謎はすぐに解けました。
5分ほど走ると麻那姫像が姿を現しました。麻耶姫って誰だ?

銅像の前に置いてあった説明を読めばふむふむ、なるほど。この麻那姫、1200年前にあったといわれる言い伝えによるものだそうです。
この辺りにあった村では大干ばつが起きており、それは竜神様の怒りによるものであったそうです。
その竜神様の怒りを鎮めるため、自ら川に身をささげた心優しく美しい麻那姫を思い、村人たちはその川に真名川と名前を付けたのだとか。

付近には麻耶姫湖青少年旅行村というかなりの広さを持つオートキャンプ場があります。

あまりに広いので不思議に思って調べると、元々は西谷村という村の一部の集落が存在した場所で、ダムの建設や水害などを理由に離村をした跡地なのだそうです。
もしかして、ここが麻耶姫が救った村…。

麻耶姫の銅像ひとつがポツンと立つ姿を眺めていると寂しくなってきましたが、1200年経ってもその伝説が受け継がれていることからも、村の方々がとても大切にされている話なのだということは伝わってきますね。

その真名川に作られた真名川ダムは、東京ドーム約72個分の貯水量を誇る巨大なダム。
1965年に起きた奥越豪雨や、西谷村の離村のきっかけのひとつとなった水害などを理由に建設されたそうです。

ダムによって真名川は湖となりました。
湖の名前は、麻那姫湖。

市街地へ降りる

ほどなくして国道157号線は福井県大野市の街へ降りました。
麦の収穫と田植えの時期を迎えた田畑では、金色の穂と瑞々しい緑が入り混じる不思議な光景が広がっています。

相変わらず天気がいい。
数時間ぶりに見る信号は縦型で、ここが雪の多い地域であることを教えてくれます。

大野市を走り抜けて勝山市に向かううち、いつのまにか恐竜街道と名付けられた区間に入っていました。

福井県では恐竜の化石が多数発掘されており、あまり詳しくない私にとっても福井県と言えば恐竜!というイメージがあります。
このあたりでは、町じゅう様々な場所で恐竜と出会うことができ、このトンネルのモニュメントもそのひとつだったようです。
ということで、ちゃっかり一緒に記念撮影をしちゃいました。

157号線からは離れていたため今回は寄りませんでしたが、大野市には化石発掘を体験できるHOROSSAという施設、勝山市には恐竜博物館という世界三大恐竜博物館にも数えられるめちゃめちゃでっかい博物館があります。
恐竜に興味のある方は是非、福井県大野市・勝山市へどうぞ。

再び山へ入る

おいしそうな水を見つけたので給水しながら進みます。

勝山市街を抜けると再び高度が上がり始めます。
それに伴い道路上には様々な雪対策が施され始めます。

左:スノーシェッドと雪崩防止柵 右:中央線と道路の端を示す標識

特にトンネルの前後にはスノーシェッドがある場所が多くありました。
スノーシェッドとは屋根を付けたトンネル状の道路で、雪崩から道を守るために作られたものです。
山の斜面からトンネルの出入口に向かって雪崩が起きたら、閉じ込められてしまいますもんね。想像をするだけでゾッとしてしまいます。


13時、いよいよ石川県に突入しました。6時間前まで岐阜市内にいたのに、信じられない気持ちになります。

石川の都道府県章って、そのまんま「石川」の字を能登半島の形になぞらえてるんですね。面白い。

ここに来て急にトンネルのなかの気温がグッと下がりました。外の気温が25度ぐらいに対して、恐らく15度ぐらいをマークしていると思われます。
メッシュジャケットで走っているため気温の変化がダイレクトに体に来ます。
さっきまで暑かったのに、トンネルの中だけ寒い。しかもひとつひとつが長くて数も多い。トンネルの前後には長く続くスノーシェッドもある。

「ちょっと~!寒いって~!」
叫んでもどうにもなりません。

なぜこんなにトンネルが多いのかというと、157号線の東に寄り添うような形で手取川ダムがあり、ダムを囲むように存在する山をぶち抜くような形で道が通っているためです。

ほら、ダムが見えました。

手取川ダムは北陸地方最大のロックフィルダム。
ロックフィルダムとは土や岩石を積み上げて造られるダムのこと。そのため見た目はこんな感じ。
中心部には水を通さないよう、コアと呼ばれる粘土質の材料が入っているのだそうです。

この手取川ダムと意外な関係にあるのが、なぎさドライブウェイです。
なぎさドライブウェイは、波打ち際を自動車で走ることができる国内唯一の海岸。その砂浜消失が問題となっているのですが、その原因のひとつが手取川ダムにあります。
ダムによって手取川の土砂排出機能が低下し、土砂が沖合に運ばれにくくなっているのだそうです。

いつまでも千里浜を走れる環境であってほしいのですが、洪水を防ぐダムも大切。意外な所に難しい問題がありました。


相変わらず冬は雪が多そうな地域を走る中、道路を横断する黒い影があります。
近づくにつれて見えてきたその姿は、なんと、カモシカでした。

天然記念物?!
ちなみにカモシカはシカではなく、ウシの仲間です。
美脚のことをカモシカ脚なんて言いますが、実際のカモシカって案外短足ですよね。
スットコと走って逃げたカモシカは、山とは反対方向、つまり人里の方へと消えていきました。大丈夫かな…。

更に30分ほど走ると徐々に車が増え、街らしい景色が増えてきました。
なによりも気になったのはこちらのお店。
揚げたてのあげあげ あげあげ屋。

え?揚げたてのあげあげ?あげあげ屋?何言ってるんだ…?
(帰宅後調べてみたところ、文字通り揚げたてのおあげが名物のお蕎麦屋さんでした。ゲシュタルト崩壊しそう。あげってなんだ?あげあげ?)

ここまで来ればあと少し。標識も、金沢まであと18kmしかないことを教えてくれます。

余談ですが、ここで愛車のクロスカブの走行距離が25,000kmを超えました。

購入からもうすぐ丸3年。いつもありがとう。
よく走ってくれてます。

徐々に住宅も増えてきました。人が多い証拠に、このあたりの幹線道路である国道157号線を跨いだ地下歩道があります。

石川県では積雪が多いため、歩道橋ではなく地下道が造られている場所も多いようです。

いよいよ金沢市街地に入れば、見てください!
兼六園と金沢城が、国道157号線と同じ方向にあるんですよ!!信じられない!!

標識だけで興奮できる。それほどにギャップを感じる酷道でした。
更に走れば大都会。金沢マルイの目の前を走るコースです。

走って気が付いたのですが、この場所には見覚えがあります。
…そうだ、以前旅行に来た時に通った場所だ!まさか、これが国道157号線だったなんて!!

記憶の中の点と点が線でつながっていき、すべてを理解してしまったようなちょっと危ない快感を覚えます。

ゴールは目の前です。あと少し!

見えてきた!!!

おおお~~~!!!

ゴール!ゴールです!
ここが国道157号線、今回の終点です!!
スタート地点と同様に、国道の始点終点には目立った印はないため、あっけないような気もしますがこれが今日のゴールなのです!!
やったぁ~~~!!!

誰が祝ってくれるわけでもないので、ひとりで終わりを噛み締めます。
あぁ、終わった。終わったんだ。

周りを見渡せば、ハイヒールを履いた女性、スーツ姿のサラリーマン、制服姿の女子高生、さまざまな方が歩いています。なんとタクシーまで走っています!都会だ!!(?)

スタート地点の岐阜市、ゴール地点の金沢市、どちらも人口40万人を超える大きい都市。
まさかこの道があの崖っぷち道路を通して1本の道で繋がっているなんて、走ったあとの今ですら信じがたいことです。
都市と都市を細い線で繋ぐ。改めて、道路とは血管のような存在なのだと感じました。


まとめ

福井県に入ってからは道路の荒れが目立ちましたが酷道区間は短く、かなり改良が進んでいる印象を持ちました。

麻那姫伝説や恐竜街道など、時間があればもっとゆっくり見たいものも多かったです。
後半になるにつれて豪雪地域の特徴も見ることができ、雪がほとんど降らない地域の住民としては興味深かったです。

過去に通った方のレポートを読むと、秋に訪れることで落ち葉が増え、違った表情の国道157号線を見ることもできるようです。
これは是非、リベンジをしなければいけませんね!!
(実際に走りに行かれる方は、天気や道路状況を確認し、事故のないよう十分にお気を付けくださいね。)

最後まで読んでくださってありがとうございました。
また次の記事でお会いしましょう、高木はるかでした!!





今回のツーリングの様子はYouTubeにもアップしています。
見ていただけるととっても嬉しいです!!